ご挨拶

 第58回日本臨床生理学会理事会において、新理事長として選任、指名を受けました、日本医科大学名誉教授、医療法人福慈会理事長の坂本長逸でございます。

 前理事長の三宅良彦先生には平成24(2012)年12月から、今回の令和3(2021)年58回日本臨床生理学会総会まで9年の長きに渡り、御指導を賜リ、誠にありがとうございました。平成24年12月は長崎において第49回学会総会が行なわれた直後であり、元理事長谷口興一先生の逝去後のことでした。一方、平成24年10月から第50回日本臨床生理学会総会が開催された平成25年(2013)11月9日までは私が本学会の会長であり、三宅先生が理事長に就任された年に私が会長を務める事になった偶然性から、私は何かしら三宅良彦先生とは不思議なつながりを感じてしまいます。

 さて、日本臨床生理学会(The Japanese Society of Clinical Physiology)は昭和45年4月、第1回脈波研究会(吉村正治会長;当時日本医科大学第二内科助教授)を出発点とし、昭和52年開催の第 14 回研究会から日本脈波学会と改称され、併せて臨床生理研究会が併設されました。臨床生理研究会には脈波学以外の領域の研究者が集うようになり、広く臨床各科にわたる病態生理学に関する研究発表が行われました。この趨勢を受けて昭和56(1981) 年 11 月 の第 18 回総会で両者を統合し、新たに日本臨床生理学会が発足いたしました。このように、本学会は「臨床医学の全ての領域をめぐる学際的研究ならびに各種疾患の病態生理学的研究を介して、疾患の成因、機序、病態、治療、予防の解明を図り、併せて医学の進展に帰与する」目的で、現在まで40年を超す活動を続けています。平成 10 (1998) 年の第 35 回総会(獨協医科大学第一内科飯塚昌彦会長)から、本学会は理事長制となり、初代理事長に谷口興一先生(当時群馬県立心臓血管センター総長)、平成24(2012)年谷口先生の御逝去後、三宅良彦先生(当時聖マリアンナ医科大学学長)が理事長を引き継がれ、今日に至っています。その名の通り、当初は脈波研究との関わりから、循環器病学を中心とする臨床生理学会であり、歴代会長には会長記録に示されているように、全国諸大学の循環器病学を専門とされる先生方が就任され、学会を運営されました。学生時代に循環器病学をいろいろ教えていただいた、母校、神戸大学第一内科教授福崎恒先生も第21回総会(昭和59年)の会長を務めておられます。

 しかしながら、今日、本学会は循環器内科学、呼吸器内科学を専門とする先生以外に消化器内科学の先生方を役員にお迎えし、学術集会は文字通り臨床生理学会へと変貌を遂げつつあります。消化器病生理学を担当する役員として最初に就任されたのは獨協医科大学の寺野彰先生であり、その後日本医科大学の私が役員として参画し、帝京大学の久山泰先生が続きました。今日の生理学の進歩を考えると、臨床生理学会としては時宜を得た進展でした。令和3(2021)年開催の第58回総会プログラムに示されているように、腸内細菌叢と循環器疾患との関わりが注目を集め、生活習慣病が強く循環器疾患と関わる時代を迎え、私たち日本臨床生理学会がますます、臨床の必要性に応える時代となったと言えそうです。

 そのような意味で、これからの時代の必要性に応える新たな臨床生理学を担う学会へと、私たちもはっきりと目的意識をもって取り組む必要があるでしょう。私も本学会の皆様のご支援、ご鞭撻を賜り、本学会を更に充実発展させるべく努力する所存でございます。何卒よろしくお願い申し上げます。